猫の恩返し
「なぁ…ナツ」


「んー?」


「それだけで腹減らないのか?」


文字通り、舐めるように綺麗になった空の缶詰を見て質問してみる


「んー、どうだろ…。食べようと思ったら食べられるかも」


ダイエットにご執心の女でもあるまいし…


「食えばいいじゃん」


「でも、いい!」


「何で?」


「だってトーゴに拾われるまでは、何にも食べられない日もあったし」


そうか…

コイツ、捨て猫だったよな


今、目の前のナツは人間の姿をしているからつい忘れそうになる


「飯は、どうやって食ってたんだ?」


「袋に入ってる食べ残しとか食べてたよ。たまに、お腹壊したりしたけど」


野良猫がゴミ袋を破り、中の残飯を漁っている光景が思い浮かんだ

親切な人間だとわざわざエサをやったりするんだろうけど、こんな都会のど真ん中で、わざわざ野良猫に構う人間など居るのだろうか


「………そういえばさ、お前…親とか兄弟は?」


疑問に思ったことを口にすると、ナツの表情が曇った
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