猫の恩返し
といっても、付き合ったのは2人だけ…

どちらも年上で、最初に付き合ったのは部活の先輩

一個上だった彼女は俺のことを『小岩井くん』と呼び、付き合う前と全然変わらなかった

元々内気な性格の彼女は、俺との交際をはやし立てられて恥ずかしくなったらしく、元々そんなに近くなかった距離が段々広がるようになってしまい、彼女の卒業と同時に自然消滅

恋人らしいことといえば、夏祭りに一度だけ手を繋いだぐらい

中学生らしいガキの恋愛だった

2番目の彼女は俺に色んな初めてをくれたが、一番の衝撃は他の男との浮気現場を目撃した時

本気で女が嫌いになるかと思った


『桐吾…愛してる』


何で今頃、アイツの顔なんか出てくんだよ…


大きく一つ溜息を吐き、猫缶を手にナツを見下ろす


「なぁに?」


「いや…別に、何もない。俺って女運がないなーって思っただけ」


苦笑するも、ナツには意味が通じないらしい


「いい女が居なかったってこと」


「私は?」


キョトンとした表情で自分を指すナツ
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