猫の恩返し
「ぶっ…。冗談辞めろよ、お前猫だろ」


何の冗談かと思って笑ったら、ムッとしたナツに猫缶を投げつけられた

既(すんで)のところで受け止め、顔面衝突を回避する


「危ないな」


「トーゴの馬鹿ぁっ!!!」


目元に涙を浮かべそれだけ叫ぶと、部屋を飛び出した


猫のくせに…扱い難しいやつ…


どこに行くかも分からないナツを放置しておくわけにもいかず、鍵を持って外に出る

まだ朝だというのに、外は焼け付くような日差しと不快な熱気

飲んで空きっ腹の…クーラーでダルさを覚えた体には、ある種罰ゲームでしかないこの環境


あーっ、もうっ!

無駄に乙女づくなよな!


恥じらいもなかったナツが急に女らしくなって、しかも自分も『女』だと言うから始末が悪い


どう相手してやりゃいいんだよ…


これがただの猫なら、こんなに悩むこともなかったんだろう


あ、そういえば…

アイツ…ケータイとか持ってないよな、当たり前だけど…


アスファルトから立ち上がる熱に負けそうになりながらも、地面を踏みしめ歩きだした
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