lovin' it
飲みきった後のカップをぼんやりと見つめる。


次の言葉がかけられるまで、自分が店に来ていることなど忘れてしまっていた。


「おい、大丈夫か。意識、飛んでるぞ」


目の前に大きな手がかざされる。


とっさに答えた私の言葉は、どうにも食い違っていて。


「大丈夫。途切れないよりマシだから」

「え?何、それ。本当に大丈夫?」


ふっと、笑う。



体温が激しく上昇していくのを頬がいち早く察知し、それを抑える手段が必要になった。


「そろそろ出ようよ。私、行きたいお店があるの」

「なんだ、やっぱり買い物なわけね」


悪いか、とそっぽを向いてみるも、彼の笑った顔を一秒たりとも見逃すまいとすぐ向き直り。



立ち上がって、一緒に店を出る。


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