lovin' it
外は曇天の真下、やたらと乾燥した風が、肌の上を吹き去った。


閉じられた自動ドアの横では、来る者拒まずのピエロが、それは不可思議に笑う。


「何してるの。行きたいって店、案内してよ」

「……うん」


足を動かす一歩手前で、ピエロに向かい細々と呟く。


何としても雑踏に掻き消されることを望み、それでも彼の耳へ届くことをどこかで期待した。


最愛の表出。




「“I'm lovin' it.”」


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