麗雪神話~炎の美青年~

セレイアはプミラを限界まで飛ばした。

「あとで必ずたくさん休ませてあげるから、だからお願い、今はあなたが頼りなの」

セレイアが時折プミラの頭を撫でると、プミラは「任せて」とでも言うようにきゅ~と鳴いて答えてくれる。

風に乗り、速度を上げて、プミラは翔ける。

なるべく風の抵抗を受けないようにプミラの背に伏せていても、ごうごうと耳元で風が鳴り、耳がちぎれそうだ。それでもセレイアは速度を落とさなかった。

そしてやっと進軍するカティリナ軍に追いつくことができたのは、国境砦に着いてしまってからだった。

赤いプミール軍が数百騎、トリステアの国境砦に今にも群がろうと、渡河しようとしているのが見える。

(様子が変だわ! トリステア軍はどうしたというの!?)

何もせずにむざむざ侵攻を許すトリステアではないのに。

セレイアが目を凝らすと、砦の上にたくさんの白プミール軍の姿が確かにあった。

しかし……

例外なく、白プミールたちはぐったりと横たわり、その上に覆いかぶさるようにして、兵士たちが倒れている。

戦う前から倒れているなど、尋常ではない!

何事かと思った時、気が付いた。

トリステアの国境砦を取り巻く、どす黒い霧のようなものに。

セレイアの直感が告げる。

あの霧が、トリステア軍を壊滅させたのだと。

そして赤プミール軍が皆、ゴーグルをしていることにも気が付いた。

きっと数時間も前、不意打ちで、トリステア軍が霧に気づけないうちに、ことをなしたのだろう。
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