麗雪神話~炎の美青年~

カティリナは不安だった。

そして孤独で、苦しかった。

国使たちとの会談に参加することを、彼女は許されず、天幕でアル=ハルの帰りをただ待っているのだ。

トリステア侵攻に失敗してからというもの、アル=ハルはろくに口をきいてくれていない。

嫌われたのだ。

決定的に、嫌われてしまったのだ。

そう思うと、針を呑んだように辛く、胸が痛い。

アル=ハルが平和を望んでいたことは知っている。けれどカティリナにはそれが歯がゆかった。目の前に豊かな国があるのだから、それを奪い取ってしまえば、もっと豊かに暮らせるのに、と思ってしまった。

カティリナはアル=ハルの笑顔が見たかったのだ。

あの笑顔。見る者を明るくする、最高の笑顔。

ヴェインと言う謎の仮面の少年に出会い、眠りの霧の策を頼んだのも、すべてはそのため。それだけのため。
< 166 / 176 >

この作品をシェア

pagetop