麗雪神話~炎の美青年~
ブレイズが、懐から何かを取り出してテーブルの上に広げて見せた。

セレイアとディセルも思わず身を乗り出してテーブルの上のものをうかがう。

遠くてよく見えないが、何かとても小さい、植物の種のようなものだった。

「これは、我が国アル=ラガハテスの神聖なる森アル=プラスより持ち帰った植物の種です。ご存知の通り、我が国は土地がやせている。にもかかわらず、アル=プラスでだけは、植物が豊かに成長します。
やせた土地でも豊かに植物を実らせる、強い植物の種。
この種があれば、トリステアにも必ずや恵みをもたらすと信じます。
むろん、寒さに適応させられるよう、品質改良は必要かも知れません。それが叶うまでの間は、風車の技術提供も待っていただいて構わない。
しかし将来的に、この種を見返りとして、風車の技術をいただくことは、できませんでしょうか?」

国使たちが息をのんだ。

痩せた土地でも育つ植物の種。

雪野菜のシステムが確立しているトリステアにとっても、それは魅力的な話だった。

なぜなら、雪野菜はどうしても種類が野菜など限られてしまい、温暖な気候を要する果物の類には技術を応用できないでいるからだ。

もしもその強い植物で果物をとることができれば、トリステアの食卓が変わる。

セレイアは感心することしきりだった。

(ブレイズさん、聖なる森で何かをせっせと拾ってたっけ。
あれは、この時のためだったんだわ!)

「…わかりました。試験的にその種を持ち帰り、国王陛下ならびに大巫女さまにかけあって、話をすすめていきましょう」

国使の返答に、ブレイズはぱっと花咲くような笑顔を見せた。

「…ありがとうございます!!」

嬉しさのあまり頬を紅潮させるブレイズが、いつもよりも数段頼もしく見えた。
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