麗雪神話~炎の美青年~
涙する自分が許せない。すべて自業自得だというのに。

そして次の台詞を言うために息を吸う。

遠い国の真冬の冷気のように、空気が胸に冷たい。

「…こうなってはもう、おそばにお仕えできません。
お暇を、いただきます…永久に」

天幕に沈黙が落ちた。

カティリナはアル=ハルの顔を見ることができなかった。

そこに自分を拒絶する意思が浮かんでいたら、きっと心が耐え切れないからだ。

長い沈黙を破ったのは、アル=ハルのため息だった。

呆れたような、長いため息。

「――――――だめだ、許さない」

「え…………?」

予想外のアル=ハルの言葉に、カティリナは思わず顔を上げた。そしてアル=ハルの表情を確認する前に、―――

強い力で、抱きすくめられていた。

カティリナは目の前が真っ白になる心地だった。

今まで十数年も仕えて来て、こんなふうに触れ合うことは一度たりともなかったのだ。
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