麗雪神話~炎の美青年~
呆然と、言葉がこぼれおちる。涙と共に。

「…アル=ハルさ…ま…?」

「許さないと言った。許せるはずがない。なぜなら私はお前を――」

「ま、待ってください」

カティリナは混乱し、思わず腕から逃れようと暴れた。

しかしアル=ハルの腕力にかなうはずがなかった。

なんとかして彼の表情を確認しようともがくが、首の向きを変えることもままならない。

しかし気のせいでなければ、―いや願望が見せる気のせいなのか―アル=ハルは今、とんでもないことを言おうとした気がする。

抱きしめる腕の力強さが、それを証明している…気がする。

そんなことあるはずがないのに。

必死で、カティリナは言葉を継いだ。

「アル=ハル様は、まだアーシャ様のことを、愛していらっしゃるのですよね? ほかの女性など、見向きもなさいませんでしたよね?」

カティリナにとっては、自分で自分の胸をえぐるような言葉だった。

いつもいつも、アル=ハルを想う時、立ちはだかる壁。絶対に越えられない壁。それがアル=ハルの亡き妻で、絶世の美女アーシャの存在だったのだから。
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