麗雪神話~炎の美青年~
「今まではそうだったがな…。
今回お前が危険を冒して、思い知らされた。私はお前を、一人の女性として愛しく思っているのだと。もちろん、アーシャとの思い出を忘れることはできないだろう。だが、アーシャならこうも言ってくれると思うのだ。新しい未来を、つかめと……」

「…………」

「私が怒っていると言ったのはね、お前が私のためにと、自分の身の危険を顧みずに行動したからだよ。私はお前に、危険な目に遭ってほしくないんだ。
何があっても。
絶対に」

「…………」

そこで、アル=ハルはそっとカティリナの体を離した。

二人の間に距離が生まれ、カティリナは至近距離でぼぅっとアル=ハルをみつめる。

彼は、たとえようもないほど優しい表情をしていた。

そして、カティリナが愛してやまない笑顔を、見せてくれた。

「補佐役はもういい。
これからは私の妻として、傍にいてくれないか」

「アル=ハル様……!!」

たまらずに、カティリナはアル=ハルの腕の中に飛び込んだ。

彼の腕の中は、あたたかかった。

どんな日差しよりも、どんな炎よりも。
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