麗雪神話~炎の美青年~
ディセルが立ち止まり、コウモリを丸ごと氷づけにする。

「だって、だってブレイズさんが…!!」

駆け寄ってきたディセルがセレイアの腕を強くつかんだ。

「落ち着いてセレイア。大丈夫だから。氷はまだ溶けないから」

「でも…!」

「どうか、危ないことはしないで」

ディセルの口調は切迫していた。

そのまなざしからは真摯な感情がうかがえる。

彼はセレイアのことを心底から心配してくれているのだ。

けれど、セレイアは頷けなかった。

腕を振り払うようにして、セレイアは告げる。

「私は戦士よディセル。危ないことくらいするわ」

「セレイア……」

ディセルがなぜか泣きそうな表情になる。それを見ていられなくて、セレイアはうつむいた。

彼女の頭上に、ディセルの思いつめたような声が降ってくる。

「じゃあせめて俺に……守らせて」

「…え?」

不意に肩を強く引き寄せられた。

かがみこんだディセルのさらさらの銀髪が肩に触れる。

腕の傷に生あたたかい感触があり、セレイアは仰天した。

―ディセルが傷を舐めた!?

そう理解した瞬間、自分でも驚くほど顔に血が集まるのがわかった。
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