ワタシの愛しの剣士様⭐
「剣道の先生………どこまで武士なんだ、まーくん」
期待を裏切らないというか、なんと言うか……
あ、でも、二人の名前は普通なんだな。
もっと渋いのを予想してたんだけど。
昔ながらの日本家屋を歩きながら、広い庭に目を向ける。すると、そこにはポツンとアヤメの花が植えられていた。
「あの花……」
それは、何もない無機質な庭には不釣り合いで、異質だった。まるで、そこだけ浮いているような………
「お姉ちゃん??」
「どうしたの??」
千夏くんと千春ちゃんがいつの間にか足を止めていた私を、不思議そうに見つめる。
それも、コテンと可愛らしく首を傾げて。
か、可愛いっ!!なんて罪作りな子達なんだろう!
存在そのものが可愛いなんてっ!
その仕草にきゅんっときてしまい、すっかり花の事は頭から抜けてしまっていた。
「お姉ちゃん、ここが道場だよ」
「お兄がいるよ」
二人に案内されたのは、家屋から少し離れた大きな道場だった。そこには、沢山の生徒に剣道を教えるまーくんの姿があった。