……っぽい。
友達くらい、いる。
そこまで寂しい29歳じゃない。
ただ、家庭があったりちょっと遠方だったり、友達のほうにもいろいろ事情があるだけだ。
君はまだ知らないだろうけれど、29歳にはいろんなパターンがあるのだよ、若者よ……。
すると。
「じゃあ、俺のところに来ます?」
笠松がとんでもないことを言い出した。
あんまりサラリと言うものだから、反応すらできずに口があんぐりと開く。
どど、どうしてそうなる⁉ 笠松大丈夫⁉
頭の中ではツッコミがバンバン流れているけれど、そのどれをとっても一つとして声になるものはなく、しまいにはスマホを取り落してしまうという有り様で、我ながらかなり動揺しているのがよく分かる取り乱し方だと思う。
ガコン、と地面に落ちたスマホを早く拾ってあげたいけれど、笠松から目がそらせない。
そんなマヌケ顔の私の目を見て、笠松はもう一度、ゆっくりと言った。
「俺と同居ラブ、始めちゃいます?」
--何これ何これ、どういうこと⁉