……っぽい。
 
このときばかりは笠松の背中がやけに男らしく見えて、いつもの“後輩男子”という枠からポーンと外れ、ただの“男”に見えた。


「先輩、ちゃんと友達いるんだ。よかったー」

「笠松、あのね⁉」


けれど、当の笠松といえば、こんな感じだ。

まるで男友達を部屋に上げるときのような軽いノリもそうだけれど、さっきの『同居ラブしちゃいます?』と言われたときから、私の調子は奇しくもずっと崩されている。


真人にドギツい浮気をされた私を励ますための冗談だということは、よく分かっている。

分かっているけれど、こうしていちいち突っかかっていないと、勝手に動揺してしまって自分が保てそうにないのが悲しい……。


「まあまあ先輩、そんなにカリカリしないでくださいよ。今の冗談、通じませんでした?」

「……分かってるし」

「会社では上手に流せるのに、実は冗談を真に受けるタイプですか? 面白すぎます」

「う、うるさいっ!」


なんなんだもう、笠松準之助……。

ケタケタと笑う笠松に、私は思う。

誰が地雷踏んだのよ、と。


そうこうしていると、いつの間にかエレベーターは目的の階に着いたようで、ドアが開くと、笠松は1人で廊下を歩きはじめてしまった。
 
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