……っぽい。
 
「……おー、準ちゃん」


もにょもにょと先輩が口を動かす。

なぜそこで先輩も準ちゃんと呼ぶのか果てしなく謎ではあるが、また夢の淵に立ち、うつらうつらとしている先輩のおでこにキスを落とした。


「結婚を前提に一緒に住んでください、とかなら、言ってもいいんだろか……。とにかく、俺も2人で住める新しい部屋を探さないとな」


先輩をこれ以上、不安にさせないように。

もうひとりで泣かせないように。

たぶん先輩は、自分で思っているよりも、他の人が思うよりも、ずっと傷つく恋をしてきた。

だから今度は俺が。


「守ります、先輩のこと」


まだ意識があったのか、ナイスタイミングな寝言なのか、どちらとも分からない「へい~……」という先輩の返事にぷっと吹き出すと、間接照明をつけ、部屋の電気を消し、俺はワイシャツのまま先輩の隣にモゾモゾと潜り込んだ。

先輩は今日も甘い匂いがする。

その匂いに埋もれるように背中からぎゅっと抱きしめると俺にも間もなく睡魔が襲ってきて、今日はマジで色々疲れたなー……と思ったのと同時に意識がふっと飛んでいった。


……起きたら先輩に弁解しよう、千晶のヤツがポイポイ投げていった爆弾について。

さすがにあれは酷かった。
 
< 244 / 349 >

この作品をシェア

pagetop