……っぽい。
 
爆睡していることをいいことに、笠松から眼鏡を拝借し、私もちょっと知的になってみる。

裸眼生活イコール年齢の私は、メガネは遊びでしか掛けたことがないけれど……なるほど。

メガネというものは、なかなかいい。


「うっふん」


ヘッドボードに置いていた、いつかのゲーセンでの戦利品であるコンパクトミラーで自分の顔を映しながら、色っぽく声を出してみる。

もちろん、表情もお色気社長秘書っぽく。

流し目や、髪を耳にかけるときは腕がクロスになるように右手で左耳、左手で右耳の髪の毛をかけ、口紅を馴染ませる仕草をしてから、んぱっと口を開け、お色気ムンムンに。


「あっはん」


次は、純情な男子校生に保健体育を教えようとするアブない女家庭教師風に、メガネをちょっと下にずらし、上目遣いを試みてみる。

と。


「メガネで俺がイってしまう……」

「ひょーっ!!」


いつの間に起きたのか、というか、いつから見ていたのか、背中からガバリと笠松に抱きつかれ、びっくりしすぎてコンパクトミラーを思わず取り落としてしまった。

やばい、さすがに恥ずかしくて振り向けない!

心臓がバックンバックンである。
 
< 247 / 349 >

この作品をシェア

pagetop