……っぽい。
 
いつも思うけれど、笠松の緩くウェーブがかった髪の毛は柔らかく、ぽむぽむと撫でているうちに、どうしても子犬のトイプーを撫でている錯覚に陥ってしまって、苦笑がこぼれる。

触り心地や、ぎゅっとしたとき、されたときのMサイズのしっくり感は、もうすっかりこの体に馴染んでいて、無くなったらとても正気じゃいられないくらい、私の中で唯一無二の存在になっているっていうのに……。

なんでこう、10匹くらいの子犬のトイプーが輪になり、キュンキュンだのクゥクゥだのと可愛らしい鳴き声を上げながら私の頭の周りを尻尾をフリフリ回っている姿がちらつくのか。

だからペットじゃないよ、彼氏だよ!

増えてどうするっ‼


と。

一人、無言で自分にツッコミを入れていると、ふと笠松の顔面に違和感を覚えた。


「あれ、メガネ掛けたまま?」


どうやら笠松は、メガネを外す気力もないままに力尽きてしまったらしい。

ノンフレームなんだから、掛けたまま寝ちゃったら歪むとかひしゃげるとかしてメガネがダメになってしまうんじゃないのかしら。

それにしても、千晶さん、よっぽど凄かったんだろうか……いや想像するまい、こうして笠松が無事な姿で寝ているのだ、問題ない!
 
< 246 / 349 >

この作品をシェア

pagetop