……っぽい。
 
そのとき私は、ちょうど真山課長に明日の会議の資料を確認して頂くために彼のデスクに行っていて、電話を受けたらしい大崎ちゃんから「課長、内線4番です」との声があり、課長はいつものように受話器を取ったのだ。

けれど「お電話代りました、真山です」と先方に電話を代わった旨を告げた数秒後、目を見開き心底驚いた顔をした課長は、ツバを飛ばす勢いで「笠松君が倒れた!?」とフロア中に響き渡るような大声でそう言ったのだった。


「すみません、大声なんか出してしまって……ええ、それで病院に……はい、仙台の……そうですか、で、容態は……ああ、そうですか……ええ、大事を取って数日……はい、こちらからも誰か向かわせます……ええ、ご迷惑をおかけしました」


課長がメモを取りながら話している、どこか上ずった声を聞きながら、けれど私は俄かには信じられずに茫然とその場に立ち尽くしていた。

課長の大声を聞いてデスクに集まってきた課の面々も心配そうな顔をして電話の内容に耳を傾けていたようだったけれど、私には“仙台”と“大事を取って数日”くらいしか耳に入ってこず、笠松は入院するほど体調を悪くしていたんだと思った瞬間、いてもたってもいられなくなり。
 
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