……っぽい。
よくできました、と言わんばかりに、にっこりと微笑む笠松を眺めながら、なんて現実的で論理的な同居人探しだと感心してしまう。
家賃と光熱費の折半--それは笠松にも、もちろん私にも、とっても魅力的な言葉だ。
しばらくの間住まわせてくれる人を探している私と、同居人を探している笠松とでは、男女という性別の違いはあれど利害は一致する。
すると、メリットばかりだし、そういうことなら同居しても……と頷きかけたところで。
「それに、俺も部屋を探さなくちゃならないんです。この部屋は1人だと広すぎますし、でもそうそう気に合う部屋も見つかりませんし、少しの間だけでも経済的余裕が欲しいわけです」
と、笠松から泣きの一手が入る。
経済的余裕--その言葉も、窮地に立たされた今の状況では魅力的すぎるくらいに魅力的だ。
昨夜もちらりと考えたけれど、現実問題、部屋も家具も一新するとなると、今までの貯金が一瞬で泡になってしまうのではないだろうか。
浮気された挙げ句、自分の部屋をホテル代わりに使われ、精神的にズタボロの今、唯一の味方が自分で稼いで貯めたお給料である。
それが一瞬でなくなってしまったら、もう何も残らない気がして、生きる気力が……。