……っぽい。
だから、と雑談を一周させて本題に戻ると、真人はスーツのポケットからキーケースを取り出し、私の部屋の鍵をテーブルに置いた。
ここでせっついて鍵をひったくるように取ってはいけない、せっかく騙せたところを私の凡ミスなんかで変に疑われでもしてみろ、一巻の終わりだ、橘海月、29歳と3ヶ月。
はやる気持ちを抑えて、私は自然な手つきを意識しながら鍵に手を伸ばす。
「ありがと」
「フランス、気をつけて」
「うん」
愛想よく笑いながら、テーブルのマイスイートキーを手に取り自分のキーケースにしまう。
私のキーケースはこれで自分の部屋の鍵が2本と笠松宅の合鍵と実家の鍵の計4本になった。
真人は……と見ると、私の質素なそれとは違い、よくもまあこんなにジャラジャラと、という感想しか出てこないほどに鍵がケースからはみ出し、もはやキーケースの機能を失っている。
「じゃ、しばらく会えなくなるけど、元気に仕事頑張って。俺、これから人と会う約束があるんだ。待たせると悪いし、そろそろ出るわ」
「ああ、うん、ありがとう」
カフェでの滞在時間、わずか5分。
真人は自分の分だけ注文の伝票を持って席を立つと、こちらに向けて手を振ることも、笑いかけることもないまま店の外へ出て行った。