……っぽい。
 
そこでようやく口を開いた笠松だったのだけれど、ワインを一気に飲み干し、勢いよくグラスをテーブルに置くと、こう言ったのだ。


「単刀直入に言います。先輩は、あの人の彼女でもなんでもありません。ただの世話焼きで都合のいい遊び相手だったんです」


トマトに伸ばしていた手が止まり、私はしばしの間、笠松に顔を向けたまま動けなかった。

私が彼女じゃない? ただの遊び相手?

3年もつき合ってきたのに、真人の中の私の存在ってそんな程度のものだったの?


「んもー、笠松ってば。どうしてそんな、平たく言えばセフレみたいに言うの? 私だってさすがにそれは気づくよー。もう酔っちゃた?」


にわかには信じられず、でも内心ではギクリとしつつ、それを誤魔化すようにヘラヘラと笑って言えば、しかし笠松はひどく真顔だった。

“セフレ”とは言わずに“遊び相手”と表現を柔らかくして言ってくれた心遣いには感謝しよう。

でも、真人とは普通にデートもしたし、ご飯も食べたし、ベッドの上だけではない恋人らしい時間を確かに過ごしてきたのだ。

あんな一瞬真人を見ただけでここまでの酷評を下してくるなんて、私にも、確かにサイテー男だけど真人にも、とても失礼な物言いである。

が。
 
< 61 / 349 >

この作品をシェア

pagetop