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第十七章
 小薄が送ってくれたものの、貫七とおりんが宿に帰ったのは、暮れ六つを大分過ぎてからだった。

「すまねぇ、女将さん」

 部屋にも寄らず、直で厨に飛び込んできた貫七を、女中連中が驚いた顔で迎える。

「おんや兄さん、遅かったねぇ。ていうか、外から帰ってすぐに来てくれたんかい?」

「ああ。今帰って来たばっかだからよ。足も濯いでねぇし、汚れたまんまだから、外仕事するよ。夕餉はもう済んじまっただろ? 湯でも沸かしてくらぁ」

 慌ただしく厨の裏に回ろうとする貫七を、女将が止めた。

「ちょいと、そんなに急がなくても。休んでないなら兄さんだって、お疲れだろ? いいから、先に飯食いな。兄さんの部屋の連れにゃ、もう運んでるから」

 そう言って、手早く一人分の膳を用意してくれる。

「ありがてぇ。じゃあ頂くぜ」

 貫七は膳を持って、厨の隅の酒樽に腰掛けた。
 おりんも足元で、女中が用意してくれた猫まんまに顔を突っ込んでいる。
 二人とも、腹が減っていたので、瞬く間に飯を平らげた。

「うめぇ~。そういや今日は、昼も食ってねぇなぁ」
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