Switch
「……何となく、読めてきたぜ」

 貫七の呟きに、政吉が頷く。

「当時若様は六つになろうかというところ。いい加減、女子の格好に違和感を覚えられてきた頃です。とはいえ、若様もご自分でご自分のことを女だと思っておられたので、何かおかしい、と思っていても、それが何故なのか、よくわからない状態でした」

「え、お嬢さんは、自分が男だって、ずっと気付いてなかったのかい」

「無理もないですよ。奉公人は、皆『お嬢様』だと思ってますから。私も特に、他に言いませんでしたし。別に知ったときに、旦那様に口止めされたわけではないですが、そうそう言いふらすことでもないですし。若様の秘密を知っている、という、ちょっとした優越感もありましたしね」

 そうしてずるずると来ているうちに、可愛がっていた娘を亡くした母親は、息子を娘として見るようになったという。

「奥方様は、お嬢様を亡くされてからは、半狂乱で騒ぐかと思えば伏せってみたり。とにかく心が壊れてしまって、まともな時がないような状態になってしまいました。そんな奥方様が、ある時若様を見て、娘が戻って来た、と思い込んだのです。で、今に至るわけで」

「それでも、店の跡取りだろ? 奥方だって跡取りを産んだからこそ、安心して下の子を可愛がってたんだろうに。何で大事な跡取りのことを忘れちまうんだ?」
< 170 / 252 >

この作品をシェア

pagetop