Switch
「……変な感じ」

 しばらくおりんを抱き締めたまま動かなかった貫七が、ぽつりと言った。
 少し、おりんが視線を上げる。

「今まで散々こんなことしてきたのにさ。おりんだけは、何か凄いどきどきする。こうしてるだけで、満足っていうか、安心する。こんなこと、初めてだ」

「おいらは結構、ずっと貫七に甘えてられたから。おいらもね、貫七がおいらのことを考えてくれてるって感じるたびに、嬉しいっていうか、こう、胸がきゅっとなってさ。何だろうな、と思ってたんだけど、自分が女だって気付いたときから、おいら、貫七のことが好きだっていうのも気付いたんだ」

 だから猫として、思い切り貫七に甘えられるのは嬉しかった。
 甘えていけば、貫七はちゃんと応えてくれたのだし。

「おいら、貫七の肩に乗って出歩くのが好きだった」

「肩に乗ってりゃ、迷子の心配もねぇしな。話もしやすいし。でもさすがに、もう無理だな」

 ははは、と笑って、貫七が少し身体を離した。
 そして、きゅ、とおりんの手を握る。

「これからは、こうやって出歩こうな」

「うん!」

 繋いだ手を嬉しそうに見たあと、おりんは大きく頷いた。
< 245 / 252 >

この作品をシェア

pagetop