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 自分に言い聞かせるように言い、立て掛けてあった竹箒を掴んで店先を掃いていると、がたた、と戸が開いて、しわしわの老婆が顔を出した。

「嬢様。そんなに激しく掃いたら、砂埃が舞って、返って汚れちまいますよ」

 お由も健在である。
 お紺は手を止め、舞い上がった砂埃が落ち着くのを待った。

「そうね。寒くなってきたから、空気が乾いてよく舞ってしまうわ」

 何だか今日は気分が乗らない。
 お紺は息をつくと、店に入ろうと、箒をしまうことにした。
 そして、何気なく通りのほうへ目をやる。

「……?」

 向こうのほうに、人影が見える。
 そろそろ夕日も落ちる頃だ。
 手前の宿場に立ち寄らずに来たのであれば、この先の山で夜を迎えることになろう。

 知らないのかと、お紺は動きを止めて、その人影が近付いてくるのを見つめた。

「……え……?」

 徐々に近付いてくる人影は、背の高い男のもの。
 濃紺の着流しを纏うその立ち姿には見覚えがある。
 お互いの顔がはっきり見える位置まで来、その男が手を振った。
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