君と手を繋ぎたくて









俺と彼女が出会ったのは、入学式の時。

桜の散り始める、4月だった。






2年生になったばかりの生徒は全員、学級委員とか関係なく、入学式のサポートを先生から言い渡された。

勿論俺も駆り出された。

面倒で仕方なくて、ハルと端の壁に寄りかかりながら、どうでも良い話をしていた。

途中、何度も担任に叱られたけど。

俺らは真面目に入学式の手伝いをするつもりはなかった。






「ハル」

「ん?」

「俺飲み物買ってくるわ」

「ん、わかった」





財布の中から小銭だけを取り出し、その枚数を数えながら、下を向いて歩いていると。

ドンッと小さく、誰かとぶつかった。






「あ、ごめんなさいっ!」





すぐに謝ってきたのは、見慣れない女子生徒。

それもそのはずだ。

彼女は真新しい制服に身を包み、リボンの色が今日の入学式の主役である1年生の学年カラーだったから。

俺のつけているネクタイを見て、彼女は俺を2年生だと知ると、90度を描くように頭を深く下げた。








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