偏食系男子のススメ【完】





「藤島、今日はどうも」




帰り道、別にいいって言ったのに送ると言ってついてきた翔くんと歩いていれば、不意にお礼された。



まったくもう紳士なんだから。ジェントルメンだ。確かに私みたいなか弱く可憐な美少女の一人歩きは危ないから、当然の申し出ともいえる。かもしれない。


まあ私今まで不審者に出くわしたこともないけど。拳一発で撃退できる自信しかないけど。細かいことは気にしちゃいかんのだ。




「何が?」


「……きらりのこと、心配してくれて」


「は、いや、心配なんか1ミクロン分の1もしてないけど」


「……してなさすぎだろ」




だって本当にしていないんだもの。


ふっと笑った翔くんは、多分私に歩くペースを合わせてくれている。


そのさりげない優しさがウザくて、わざと早歩きしてみたけどジェントルメン平田(ヒラタ)は頑なに私が一番歩きやすい歩幅を保ってくれていたから、どうしていいかわからない。



川端さんや早川のことは遠慮なく突き放せるけど、翔くんは大人で尊敬できる面がないこともないから、まあ対等な関係でいてやってもいいかなって思ってる。


こんな風に上から目線な私でもいいって言うならだけど。




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