偏食系男子のススメ【完】
早川は恐る恐る私の機嫌を窺うように上目遣いでこちらを見上げたけれど、またすぐに顔を逸らして口元を右手の甲で覆った。
だ、か、ら、そうやって口元を隠すから上手く聞き取れなくなるんでしょうが! 苛々させるなあもう!
「で、なんなの?」
今度こそはちゃんと聞き取ろうと、一歩早川に近付こうとした瞬間、後ろから何かに背中を押されて体がよろけた。
固いコンクリートの地面に倒れ込みそうになる寸前で早川が肩を支えてくれたから、体勢を整えられたけど。
「だ、大丈夫藤島」
「……最悪」
振り返れば、同い年くらいの男子グループがふざけ合っていて私にぶつかってきたのだろうと分かったけれど、当人たちは謝りもせずにさっさといなくなってしまった。
あいつら全員一斉にハゲればいいのに。今すぐに。
「……行こう早川」
「え、どこに……」
こんなとこじゃ落ち着いて話すことも叶わない。
ていうかイラついてしょうがない。静かなとこに場所を変えよう。
早川の手首を引いて、すぐ近くのその一点を目指して歩き出した。