偏食系男子のススメ【完】
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「行ってらっしゃいませー」
従業員の言葉を受けて、ガコンッと音を立てたその機体はゆったりしたスピードで地上から遠退いて行く。
「どうよ、ここなら静かでしょ」
ぼけーっとしたまま私に付いてきた早川と向かい合って座った観覧車の中で、勝ち誇って笑ってやる。
我ながら良いアイディアだ。静かだし、逃げ道も他人の目もない。誤魔化されてなんかやらない。
所要時間約15分。並んでいる人は全くいなかったから、話が終わらなければまた連続して乗ればいい。
「……で、なんなわけ? さっき言いかけたこと」
「いや……べつに……」
「言え」
眉を顰めて睨みつければ、ようやく観念したのか早川はちらりと私を見て、大きく息を吐き出した。
その後に今度は目元を両手で覆って、背もたれによしかかる。
「……俺、藤島超好き」
「……はっ!? ……いや、そんなこと聞いてないし……!」
軽く動揺したのは不意打ちだったせい。
だってそんな話はしていない。意味わからん、脈略なさすぎだ! ……でもそういえば早川って奴は元からそういう奴だった。今更しょうがないか。