偏食系男子のススメ【完】
……それはそうだ。そんなのそうだ。それもそうだ。その通りだ。
確かに、嫌いじゃない、って呟きはしたけど。
――あのクソガキ、聞いてたのか……! 聞こえないふりしといて!?
しかも早川本人に言うなんてどういうつもりで……! ふざっけんな!
「わ、私は、好きって言ったわけじゃないから!」
「分かってるって藤島」
「ああもうほんっと有り得ない! 何で言うわけ!? ただ嫌いじゃないだけだから!」
「わ、分かってるから藤島」
異常に体温が上昇していくのが分かる。
不自然なほどに否定した言葉を、自意識過剰な早川にしては珍しく素直に受け止めた。
……私も何焦ってたんだろう。
よく考えれば、嫌いじゃないって言っただけなのに。早川だって、それがイコール好きに繋がらないことは分かっているのに。
「……分かってるけど藤島、……なんで顔赤くなってんの?」
「……」
狼狽えて訊く早川の声に、私の方が一気にその倍狼狽える。
一瞬で身動きが取れなくなった。
何か下手な言い訳でも述べるべきなんだろうけど、頬が火照っていることを自覚して、余計に頭はパニクる。