偏食系男子のススメ【完】
「……あのさ、美織に聞いたんだけど」
「え?」
「最後に、デンゴンってやつ」
「……ああ。あれ。何言われたの?」
そうだ、それ。それを聞こうと思ってたんだ。
別に特別気になるわけじゃない。けど、それから早川がおかしいし。いや違うか。おかしいのこそ元からか。
……あれ、おかしいのがいつものことなら、じゃあ早川は今も別に普通なのかもしれない。……よくわからなくなってきた。
これだから変人は。と、全て早川のせいにしたところでその本人が、急に背筋を伸ばして、やっとこっちを見てくれた。
真正面から目が合う。まっすぐな瞳。
何故か今度は、私の方が逸らしてしまいたくなった。
「……藤島、俺のこと嫌いじゃないって言ってたって」
「……はい?」
なんだって?
……え?
早川の言葉が0.1秒間の間に数万回、頭の中でリピートされた気がしたけれど、その意味を理解するのには数秒を要す。
「――や、分かってるから藤島! 嫌いじゃないってイコール好きってことにはなんないっつーのは!」
間に、早川は慌てて言い訳のように付け足した。