偏食系男子のススメ【完】
そういえば翔くんに告白されたことは、なんだか面倒なことになりそうで早川には言っていなかったんだ。別に隠してたわけじゃないけど。
「……何でもない」
「……もしかして藤島、あいつに告られたの?」
なんでこんなときだけ鋭いわけ! そこは察さなくてもいいところだ。
きっぱり言い当てられたことに無駄な感心をしつついれば、より一層眉根を寄せた早川が徐に立ち上がったせいで、ゴンドラが僅かに揺れる。
「……早川?」
高いところが苦手ってわけではないけれど、さすがに揺れると多少は怖くもなる。ふざけんな。
その犯人を見上げて睨みつけるも、まったく動じることなく涼しい顔した早川が私を見下ろしていた。
「付き合ったの? 断ったの?」
「……付き合ってない」
事実を告げれば、ほーっと安堵したような溜め息を吐き出した彼は、そのまま自分の元の席に座り直す。
わけじゃなく、何故か私の隣に腰を下ろした。
「……なんでこっちに座んの、死ね」
「……お願いだから焦らせんなよ藤島」
「あんたが焦ることじゃないじゃん」
ゴンドラの中ってこんなに狭かったっけ?