偏食系男子のススメ【完】




肩が当たっているせいで、全意識が早川のいる左側に集中していた。




「……早く戻って、暑苦しいから」


「いいじゃん、同じ景色見れて楽しいよ」


「全然楽しくないから。むしろ不愉快だから。……いや、もういいや、私が移動する」




手間かけさせやがって。こっから出たら髪の毛全部むしり取ってやる。


と思って立ち上がったのに、あっさりと左腕を引っ張られて元の位置に座り直させられてしまった。



その際お尻を強打した。マジで痛い。死ねこの暴力野郎!




「行かないで藤島」


「じゃあお前が逝け」


「……殺気立てるのヤメテください」


「ていうかこの手はなに? 離せ」




さっき掴まれた左手は繋がれたまま、何故か早川の膝の上に乗せられている。


繋がれた手を抜こうと力を入れるのに、その倍以上のバカ力がそれを阻止してきて逃げることができない。




「無理、絶対離さない」


「はあ!? いい加減にしろ!」




言って、早川の鳩尾にパンチでも入れてやろうと自由な右手を繰り出したのに、それもあっさり捕まってしまった。


……いつもならこれくらい、簡単に食らわせることができるのに。


自分の身は自分で守る。当然のことだけど。



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