偏食系男子のススメ【完】



相変わらず左手は繋がれたままだけど。



どうする? もう一回何か仕掛けてみようか?


……でも正直、上手く当てられる自信がない。こんな狭いところじゃ暴れられないし。


もし下手にこちらから何かして、それこそ早川に本気になられちゃ私は絶対敵わないだろう。


ここは大人しく耐えて、下りたら思う存分警察に突き出してやろうと思う。あと手を念入りに洗いたい。



……しかし嫌だな。そんな風に言われたら変な汗かいてきた。


ていうか手汗がやばい。でもこれにドン引いて離してくれたら結果オーライかもしれない。



抵抗を諦めた私に気付いた早川は、満足そうに笑うとこちらから顔を逸らして外の景色に目をやった。


……なんっかムカつくな。



その横顔を憎らしく思いながら眺めるけれど、繋がれたままの左手が感じる早川の熱に、どうしようもなく顔が熱くなる。


会話はなく、私だけが緊張している中で息を吐くことにさえ気を遣って唇を噛んだ。



……本当にどうしてこんなことになってるんだろう。


マジであり得ない。最悪だ。


私きっと酷い顔してる。手繋いだくらいで火照った顔は見られたくない。絶対。今こっちを見るなよ。




< 261 / 310 >

この作品をシェア

pagetop