偏食系男子のススメ【完】
「……藤島」
「音楽室にはなかったよ」
「……そ」
少しは私に期待してくれていたのか、上がった顔はまたがっくり俯き、悲壮感が漂う。きっもー。
幸薄そうな性格ブスってもう救いようがないぞー。
言いつけどおり教室の隅から隅までを探したのか、床には色々物が散らかっていて泥棒に入られたあとみたい。
……ふーん。一応、一生懸命探しはしてたのねえ。
私に探させといて、余裕ぶっこいて平然としているようないい加減な性格のクソ猿じゃなかっただけ褒めてやろう。
頑張ったね、偉い偉い。
「あ、そうだ」
「……え?」
「島林くんが、あんたに用事あるって。家庭科室で待ってるって。大事な話だって」
「……竹林だっつーの! ……ていうか何の用だよ、行けないよ。……まだ見つかってないし……」
もちろん嘘だけど。
不安そうに視線を床に落とした彼女は、自身の髪の毛を耳にかけて、震える声を吐き出した。
意外と責任感と根性はあるみたいで、ほんの少し見直す。
早川のためっていう不純な動機で会計になったくせに、まともに仕事しようとしてるみたいだから、……しゃあないから、これは返してやるよ。