オトナの恋を教えてください
仕事に対する気持ちが強くなり、母との関係性に変革の気持ちが芽生え始めた。
おそらく彼女には、初めての自立の機会だ。
大きすぎる母の陰で育ったいろはが、ようやく自分の足で歩きたくなったのだ。

サナギになった彼女が美しく羽化するのが見たい。
できれば一番近くで見守り続けたい。
これからもずっと。


そんな口に出せない気持ちが、俺の中に確かにある。


オレンジ色の電車は吉祥寺に到着する。

人の波に乗ってホームに降りると、さっきのお姉さんが声をかけてきた。


「よければ、飲みなおさない?」


「よくないッス。俺、彼女いるんで」


「ふぅん、真面目」


お姉さんはたいして気分も害していないようだ。お酒のせいなのか、こうしたやりとりに慣れているのか。
バイバーイと手を振って、改札階に降りて行ってしまった。
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