この列車は恋人駅行きです。



「…呼んでみて?でも……」


「……え?」



いきなり肩を軽く押されたかと思ったら背中が壁とぴったりくっついていて、目の前には遠野さんの端正な顔があった。



横にずれようとしても遠野さんが壁に手をついていて、全く動けない。



どうしようかと考えている間にも遠野さんの端正な顔がどんどん近づいてくる。
妖艶な潤んだ瞳から目が離せない。



え、ちょ…っ…ち、近いって……!



「…僕といるのに他の男の名前を何度も言わないで?
そいつに嫉妬しちゃうから」


「…っひゃ……っ」



耳に遠野さんの吐息がかかって自分じゃ考えられないような声が出てしまった。



耳から顔が熱くなって、その熱は徐々に全身へと広がっていく。



体が痺れてうまく動かせない……っ
こういう時にどういう対応をしたらいいのかすっかり忘れてしまった。



「…あ、あの遠野さん……っ」



遠野さんの方に顔を向けると、遠野さんはいつもの王子様スマイルに戻っていた。



「さ、取材を始めようか?」



こ、このチャラ男……っ
遠野さんのチャラさに熱を帯びていた体が一気に冷めていった。


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