まだ、心の準備できてません!
「……三木さんは、知ってるんですか? 浅野さんが何を考えているのか」
肩に掛けたバッグの紐をぎゅっと握りながら尋ねると、彼女は無表情を崩さずに迷いなく言う。
「知っていますよ。私は、彼に信頼されていますから」
胸が、締め付けられたみたいに苦しくなる。
そうだよね……三木さんは浅野さんにとって特別な人なんだから。何でも話していたって不思議じゃない。
そんなことわかりきっているのに、どうして聞いてしまったのだろう。
また胸が痛み出すのを感じて目を伏せていると、オフィスから漏れ聞こえる、がやがやとした騒音に消されそうなほどの小さな声で、三木さんが呟く。
「……信頼はされていますけど、ただそれだけです」
「……え?」
“それだけ”って、どういうこと?
彼女を見やると、わずかに寂しげな色を湛えた瞳で、どこか遠くに目線をさ迷わせていた。
私の疑問が解消されることなく、三木さんは一歩足を踏み出してドアに手を掛ける。
「私からはお教え出来ませんので。申し訳ありませんが」
事務的に告げると、彼女はオフィスの中へと姿を消していった。
私の中にはもやもやとしたものだけが残って、わからないことだらけで気持ちが悪い。
糸がぐちゃぐちゃに絡まった状態で、私は上の空のままトワルを後にした。
肩に掛けたバッグの紐をぎゅっと握りながら尋ねると、彼女は無表情を崩さずに迷いなく言う。
「知っていますよ。私は、彼に信頼されていますから」
胸が、締め付けられたみたいに苦しくなる。
そうだよね……三木さんは浅野さんにとって特別な人なんだから。何でも話していたって不思議じゃない。
そんなことわかりきっているのに、どうして聞いてしまったのだろう。
また胸が痛み出すのを感じて目を伏せていると、オフィスから漏れ聞こえる、がやがやとした騒音に消されそうなほどの小さな声で、三木さんが呟く。
「……信頼はされていますけど、ただそれだけです」
「……え?」
“それだけ”って、どういうこと?
彼女を見やると、わずかに寂しげな色を湛えた瞳で、どこか遠くに目線をさ迷わせていた。
私の疑問が解消されることなく、三木さんは一歩足を踏み出してドアに手を掛ける。
「私からはお教え出来ませんので。申し訳ありませんが」
事務的に告げると、彼女はオフィスの中へと姿を消していった。
私の中にはもやもやとしたものだけが残って、わからないことだらけで気持ちが悪い。
糸がぐちゃぐちゃに絡まった状態で、私は上の空のままトワルを後にした。