まだ、心の準備できてません!
けれどすぐに、熱く色気のある眼差しに変わり、頬にそっと触れながら私を射抜く。


「俺も我慢する気ないから、覚悟して」


──ドキドキと、弾むように胸が高鳴る。

身体も気持ちも高揚して、自然と温かい涙が溢れる。

目の前の愛しい人しか見えなくて、感じなくて、この人と一緒にどこまでも行きたいと思う。


……思い出した。これが、恋をするって感覚だった。

でも、この二度目の恋は、ただ盲目になっていたあの頃の脆い初恋とは違う。

根拠はないけど、この人はきっと私を不幸にはしないって、強く思えるから。


穏やかに舞う真っ白な雪を溶かすくらい、熱い視線を彼と交じらせた私は、意を決して口を開く。


「時間掛かったけど、準備できました。……夏輝さん」


久しぶりに呼んだ名前は、以前にはなかった愛しさを感じた。

安堵と嬉しさが混ざった笑みを見せた彼は、瞼を伏せながらゆっくり顔を近付ける。

吸い寄せられるように、優しく唇が重なり、閉じた瞳から涙がこぼれた。


濡れる唇から、髪を撫でる手から、愛情が流れ込んでくるような気がして。

このぬくもりを決して離さないように、私はしっかりと彼の背中に手を回す。

幸せが降り積もる中、私達は溶けるように熱いキスを交わし続けた──。




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