まだ、心の準備できてません!
探るような目で聞かれ、晴菜は陽介に目をつけているのだろうと確信した。

もし私達が親密にしていると思われたら、また無理やり奪おうとするのかな。

……嫌だ、陽介とはギクシャクしたくない。

付き合う前でよかった。やっぱり、私達は友達のままでいた方がいいんだ、きっと。


「えっと、僕達は──」

「ただの友達だよ。それ以上でも、以下でもないし、この先ずっとそれは変わらない」


陽介の言葉を遮って、私ははっきりとした口調で言った。

あからさまに安心したような晴菜とは反対に、陽介はとても悲しそうな表情になる。

……ズキン、と胸が痛んだ。


「……ごめん、私、用事思い出したから帰るね」

「あ、ほんとに? そっかーじゃあまたね!」


笑顔で手を振る晴菜と、何かを言いたそうにする陽介から顔を背け、私はレストランがある方に向かって走り出した。

今はもう、彼女の前からすぐに去りたい。



「みーちゃん、待って!」


橋から十メートルほど離れたところで、追い掛けてきた陽介にぐっと手首が掴まれる。

その衝撃で、私は手から花束を放してしまい、それは地面にパサッと落ちた。


「陽介……ごめん、晴菜のとこに戻って?」

「僕が一緒にいたいのは晴菜ちゃんじゃない」

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