まだ、心の準備できてません!
私の目の前まで来ると、夏輝さんは微笑みながら口を開く。


「よかった、会えて。着いた時にはもう閉店してたんだけど、自転車があるからもしかしたら戻ってくるかもと思って」

「まさか、私を待ってたんですか? どうして……」


戸惑う私に、彼は小さな箱状のものを差し出してきた。

ピンク色のリボンとレースペーパーで飾られた、透明なボックスから覗くのは、色とりどりのマカロン。


「わぁ、可愛い!」


思わず声を上げて目を輝かせる私に、夏輝さんはそれを手渡して言う。


「今日誕生日だろ? おめでとう」


彼の顔に目線を移す私は、きっと嬉しさと戸惑いが混ざった、おかしな顔になっているに違いない。


「何で、わざわざこんな……」

「俺も君の誕生日を祝いたかっただけだよ」


……つ、掴み所のない返答。この間からこんな感じばっかりじゃない?と思いながら、微妙な笑みを浮かべる私。


「でも、私が戻ってくるかどうかもわからなかったのに」

「その時はそれまでさ。こうやって会えたってことは、きっと俺達は縁があるんだよ」


さらりと言う彼の真意は、相変わらずよく読めない。

でも、“たしかにそうかも”と思わせられてしまうから不思議だ。

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