まだ、心の準備できてません!
「何年か前に、タケちゃんのそばにスーパーや飲食店が出来ただろ? そこへ客が流れちまって、年々厳しくなってるらしい」

「あ、そういえば……」


本屋や薬局なども立ち並ぶようになり、開けたあの場所を思い出す。

昔からお父さんと交流があって、古風な雰囲気のお弁当屋さんであるタケちゃんは、マシロのお得意様のひとつだ。

そこの経営が厳しいだなんて話を聞くと、他人事とは思えず物悲しい気分になる。


「便利で新しいものが出来れば、皆そっちへ行っちまうんだ。いい改善策が見付かればいいんだが、俺達みたいに地域と馴れ合ってやってきた人間は、競争の仕方なんか知らないからなぁ……」


お父さんはため息混じりに言い、私の存在を忘れたかのように、ひとり事務所の外へ出ていった。

……やっぱりなんか変。元気ないっていうか、覇気がないっていうか。

今の言葉もなんだか実感がこもっていたし。タケちゃんのことだけじゃなくて、お父さん自身のことも言っていたように思える。


これまで何の問題もなくのんびりとやっていたマシロも、競争しなくちゃいけないということだろうか……。

お父さんが抱えているものがよくわからないまま、私も後を追って事務所を出た。


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