パンジーの花

無視をしたんだ。最初は。
だが、何回も大丈夫ですか。って言うんだよ。なんだこの女って思った。
うるせぇな。て思って目を開けたら、
泣きそうな顔してたんだよ。
喧嘩とかそういう類を嫌いそうな奴だった。
俺が目を開けたら、嬉しそうに笑って、
"これ、使って下さい"
そう言って、絆創膏を俺に渡したんだ。
始めてだった。俺に優しくしてくれるやつが。
何も喋らない俺を見兼ねてか、絆創膏を渡したらどっか行こうとしたんだ。
俺はそれを止めて、名前を聞いたんだ。
"白川ユリ"
その名前がずっと頭の中に、何回も何回も呼んだ。
俺は礼も言えずにただ呆然としていた。

< 36 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop