課長の独占欲が強すぎです。

 私の気持ちを汲むのが早すぎるだとか、『受け取れ』って強引過ぎるとか、言いたい事はあるけれど。でもそれより垣間見えた彼の優しさが嬉しい。

「ありがとうございます。大切にします」

 嬉しくて小袋をキュッと両手で抱きしめると、和泉さんは一瞬目元を和らげて大きな手で私の頭を撫でる。

 いつも痛いほど強く腕を掴む和泉さんの手とは思えないほどそれは優しくて、安心感さえ感じる大きな感触は私の心まで撫でてくれたみたいだった。

***

「今日は楽しかったです」

 陽が傾き始めた海を遠目に見ながら駐車場へ帰る道すがら、私は和泉さんにお礼を述べる。

 行く前はあれこれ心配もあったし、今日も何度か呆れられたりもしたけれど、それでも振り返って見ればとても楽しい1日だった。

 和泉さんは「ああ、そうだな」とだけ答えると、私の腕を軽く掴んで自分の腕へとしがみつかせる。

< 103 / 263 >

この作品をシェア

pagetop