課長の独占欲が強すぎです。
なんでそんな事を聞くんだろうとますます不思議に思えば、東さんは「そうだよね、当たり前だよね」と言いながら真剣だった表情を苦笑に変えて一歩離れる。そして、自分の前髪を掻きあげながら目を逸らした。
「ごめん。俺、まだ橘さんに未練あるみたい。元気付けたい一方で、君の心の隙間に入り込めるチャンス探してる」
小さな会議室に落ちた東さんの吐露。和泉さんへの不安ばかりで弱っていた心に、それはきつく痛く染みる。
こんなとき、なんて返せばいいか分からない。謝るのも断るのも違う気がする。だって東さんは私が和泉さんに気持ちがあるのを知ってるうえで伝えてきたのだから。
黙って俯いてしまうと、「ごめん」と謝ってきたのは東さんの方だった。
けれど、彼は「もうしない」とも「もうあきらめるから」とも言わず、そのまま会議室から出て行く。
それがどういうつもりなのかを理解した私は、ひとり残された会議室で気持ちが落ち着くまで佇むしかなかった。