課長の独占欲が強すぎです。

 天気もいいし着ている内にすぐ乾くとは思うんだけど……困ったな。

 思いもよらぬ事態にどうしようと考えあぐねていたら、突然背中からジャケットが掛けられた。車から降りるとき和泉さんが着ていたものだ。
 
「乾くまで着ていろ」

「すいません、ありがとうございます……」

 和泉さんの気遣いに感謝しながら、濡れた胸元を隠すようにジャケットのボタンを閉める。

 借りたジャケットはスリムタイプのショート丈にも関わらず、50センチ近い身長差のある私が着るとダボダボもいいとこだった。『洋服に着られてる』と云う表現がピッタリあてはまる。

「なんか、私が着ると幼稚園児のスモッグみたいですね……」

 余りまくった袖を見せながら自虐的な苦笑を向けると、和泉さんは何故か眉間に皺を寄せ溜息を吐き出してから視線をそむけた。

 また呆れられてしまったんだろうか。以前にも同じような反応をされた事を思い出す。その事がちょっとだけ悲しくて、私は長すぎる袖を指先でキュッと握りしめた。

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