片道切符。


二人並んでベンチに座ると、彼女が僕にもたれかかってくる。


「なに?甘えた?」

からかうように笑って、彼女の顔をのぞき込むと、

思いのほか真面目な顔つきをした彼女がそこにいて、戸惑う。


「…甘えた。ずっと、くっついていたい。」

擦り寄るように、俺の左腕に絡んでくる彼女に、漠然とした不安を覚える。


…変だ。今日の彼女は、どこか、いつもと違う。

珍しく甘えてくるのは、久しぶりにゆっくり会えた、その反動だけじゃないはずだ。


俺から彼女に向けた笑顔が、瞬間に消える。

それに気づいた彼女が、「なんでもないよ」と困ったように笑顔をみせた。


「…嘘つき。」

「……うん。」

だけどその笑顔が無理して作ったものだってことくらい、わかるよ…。

絞り出したような彼女の返事が、胸にぐっと突き刺さった。


「あの、ね…」

目と目が合った瞬間、なんとなく察してしまった。

彼女が、俺から離れていくんだなって。


そして俺にはそれを引き留めることはできない。

俺から離れていく理由を考えれば、できるわけないんだ。

離れたくて離れるわけじゃないってことも、わかってるから。

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