片道切符。


それでも俺には…少しの理性が働いていたし、

そこまでひどくしてねーだろと思いながら、彼女の頭をそっと撫でた。

「…悪かったな。」

「まひ…ろ…?」

…彼女の俺の名前を呼ぶ声は、心臓に悪い。

心がおかしな音を立てて軋むんだ。


冷蔵庫からペットボトルに入った水を持ってくると、

タオルケットから頭を出した彼女がいた。

…なんだよ、やっぱり泣いたのかよ。

赤く潤む彼女の瞳に、少しの罪悪感を抱きながら、

ベッドを背もたれにするようにして、彼女のそばに座り込んだ。


「ちょーだい。」

「ん?」

「お水。」

俺が口つけたあとの水を飲む彼女も、平気で渡してしまう俺も、

甘いんだよな。二人の関係が、はっきりとしない。


「…っめた!なにすんだよ!」

「ふふふっ」

ふいに背中にぴとりと当てられた冷たさに、思わず飛び上がる。

振り返れば、ペットボトルを手にした彼女が笑っていた。


彼女の笑顔を見て、心の奥で、何かがじわりと疼いた。


「…ごめん。」

「……まひろ?」

「ひどくして、ごめん。」

< 40 / 64 >

この作品をシェア

pagetop