月だけが見ていた

駅までの道を、並んで歩く。

特に何を話す訳でも無いけれど
手は握り合ったまま。


街灯に照らされた影が、2つ伸びていくのを
何となく、眺めたりなんかしながら


「階段、大丈夫か?」


ふいに、主任が口を開いた。


「え?」

「今日、ヒールだろ」


主任の目線の先には、いつも渡る長い歩道橋があった。
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